西洋人の目に触れたベリーダンスは、西洋人の好みに合うように形を変えていきました。(衣装に与えた影響については、前回記事をご覧ください。)
ベリーダンスのスタイルも同様に、西洋の顧客に向けて変化を遂げてきました。ベリーダンスショーや舞台を観に行った方たちはおそらく、スペースを使って大きく動くスタイルをよく目にすることでしょう。
ところが、もともとのベリーダンスのスタイルというのは
「優れたダンサーはタイル一枚分のスペースで踊る」
、という言葉に象徴されるようにスペースを最小限に使って動く踊りでした。
現代のベリーダンスを「ラクス・シャルキ」(東方の踊り、という意味)と称するのに対し、伝統的なスタイルのベリーダンスは「バラディ」と呼ばれています。
現代のベリーダンス=ラクス・シャルキのスタイルを作り上げたのは、「幻想が生み出した?ベリーダンス衣装」でも触れたカイロのナイトクラブ「Casino-Opera」を開いたBadia Masabniというシリア人女性です。
Masabniはナイトクラブの顧客である西洋人の好みに合わせて、衣装だけでなく踊りのスタイルをも変えていったのです。
バラディとラクス・シャルキのスタイルの違いをみてみましょう。
●(バラディ)お腹や腰を中心とした動き → (ラクス・シャルキ)上半身や腕を使った動きが加わる
●(バラディ)一点からほぼ動かない → (ラクス・シャルキ) スペースを使う
*その他、現代のベリーダンスには欠かせないベールも西洋の踊りから導入されました。
私がまだベリーダンスを習いたてのころ、エジプト人の先生からスヘイラ・ザキという有名なダンサーさんのビデオを見せてもらったことがあります。
その頃習ってた曲をスヘイラ・ザキは伝統的なバラディスタイルで踊っていました。
本当にその場から動かないし、動きも繊細だけどおとなしい。
ラクス・シャルキ=ベリーダンスだと思い込んでいた昔の私の眼には「随分地味でつまんない」印象でした。
でも今改めて、ユーチューブなどでスヘイラ・ザキのバラディスタイルを観ると、むしろこちらの方が相当難しいと感じます。
一点から動かず、観客を魅了し続けるなんて…本当に素晴らしいです。
そのスヘイラ・ザキのバラディスタイル動画をお送りします。
「優れたダンサーはタイル1枚分のスペースで踊る」の最高のお手本です!
「ママのための踊り、ベリーダンス」をテーマに8回に渡ってその歴史を紹介してきました。
繰り返しになりますが、私がそもそもベリーダンスに興味を持ったきっかけが「ベリーダンスの動きは出産と関係がある」という説を耳にしたからで、調べれば調べるほど、母性・女性に深く関わる豊かな歴史に魅せられていきました。
この記事をきっかけに、少しでもベリーダンスに興味を持ってもらえたらとても嬉しいです!
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