前回の記事「地母神・女神信仰とベリーダンス」では、古代地中海・中東世界に女神信仰とともに生まれたベリーダンスのことについて書きました。
私はこどもの頃から神話が好きで、一番好きだったのはギリシャ神話、次によく読んでいたのは松谷みよ子氏が児童向けに書いた日本の神話だったのですが、ベリーダンスの歴史を調べるうちに、
大地の豊穣、子孫繁栄が古代人にとって普遍的なテーマであるならば、日本にだってベリーダンスは存在したのでは?
、と思うようになりました。そのときに思い出したのが、古事記に出てくる有名な「天岩戸」の伝説です。
太陽であるアマテラスオオミカミが天岩戸に隠れて世界が暗闇になったとき、その危機的な状況を救ったのがアメノウズメノミコトの踊りでした。
神話によれば、その様は次のように記述されています。
「槽伏(うけふ)せて踏み轟こし、神懸かりして胸乳かきいで裳緒(もひも)を陰に押し垂れき。」
(アメノウズメがうつぶせにした槽(うけ 特殊な桶)の上に乗り、背をそり胸乳をあらわにし、裳の紐を股に押したれて、低く腰を落して足を踏みとどろかし、力強くエロティックな動作で踊って、八百万の神々を大笑いさせた。)
松谷みよ子氏の本の挿絵では、アメノウズメノミコトがお腹を出してコミカルな踊りをおどって神々を笑わせるシーンが描かれていました。
私は、これこそ古代の日本におけるベリーダンスだ!、と思いました。
暗闇(死)から光(生命)を取り戻すためには踊りが、必要だったのでしょう。
ベリーダンスはまさしく、生命を産みだす女性の踊りなんですね。
ここまで、ベリーダンスの歴史を振り返りながら「母性とベリーダンス」の密接な関係について解説してきました。
古代に生まれ、女神信仰が途絶えた後も連綿と踊り継がれてきたベリーダンス。
一体誰が踊りの担い手となってきたのでしょう?
次回記事では、「ベリーダンスの伝承者たち」をスポットを当てたいと思います。
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